「うさぎドロップ」レビュー

子育てに奔走するパパママと子供たち

＜登場人物＞

• 河池大吉（かわち　だいきち）
  30歳独身男。男気と正義感があり後輩から慕われる存在。りんの引き取り手となる
• 加賀りん（かが　りん）
  亡くなった祖父の隠し子。頭がよくしっかりした女の子。
• こうきまま
  りんの同級生「こうき」の母親。働きながら子育てをするシングルマザー。
• 前田春子（まえだ　はるこ）
  大吉の従姉妹。りんと同学年の娘を持つ母親
• 正子（まさこ）
  りんの母親。子育てを放棄し漫画家を続けている。子育てに対する自信がなさが原因かも。。。

登場人物たちは、子育てに一生懸命なパパやママ、子どもなりに考えながら毎日を生きている子どもたち、そして結婚や子育てを経験していない大人たちまで、実にさまざま。
いろんな立場から描かれるからこそ、子育ての幸せや大変さ、家族になることの難しさ、夫婦のすれ違いなど、結婚や子育てについて自然と考えさせられるんですよね。

それでも基本的には、みんなとてもあたたかい人ばかりです。
お互いに子育てを助け合ったり、情報を共有したり、右も左もわからない大吉をそっと支えてくれたり。
大吉自身も素直に人の助言を受け入れるタイプなので、重いテーマがありつつも、ストレスなく見進められる作品だと感じました。

家族ごとの子育のかたち

この作品には、本当にいろんな“家族の形”が描かれています。
大吉のように未婚のまま突然子どもを育てることになった大人もいれば、仕事と子育てを両立するシングルマザー、専業主婦として家事と育児に向き合いながらも、夫の家族になじめずに悩む女性もいます。
子どものために仕事を調整するお母さん、育児と仕事のバランスに奮闘するお父さんなど、そのスタイルは本当にさまざまです。

一方で、りんの母親のように自信のなさから子育てを手放してしまう女性や、育児に関わろうとしない夫、自分の時間を失いたくないという理由で結婚や子育てに前向きになれない女性の姿も描かれています。
「こうあるべき」という決めつけではなく、多様な向き合い方がそのまま作品に反映されているところが、とてもリアルなんですよね。

私自身が一番近いと感じた人物像は、たぶん“未婚で、まだ結婚を意識しきれていない女性”かなと思います。
だからこそ、作中のいろんな人の意見や価値観に触れられることが、ちょっとした疑似体験のようで面白いんです。

それでもほとんどの登場人物は、根っこのところで子どもをちゃんと愛している人ばかりで、自分の時間を失うことを“犠牲”とは考えていないように感じられます。
子育ては大変だけど、そのぶん確かに幸せも返ってくる。
むしろ子どもに向き合う時間そのものが、自分自身の大事な時間になっている——そんな風に思わせてくれる描写が多くて、見ていて安心できるし、ストレスを感じることがほとんどありませんでした。

一番可愛い子供キャラは「りんちゃん」一択！

なんといっても、りんちゃんが本当に可愛いんです。
最初は引っ込み思案で不安げな様子もありましたが、大吉に心を開いていくにつれて、素直で明るくて、とても賢い女の子だということが分かってきます。
自分より小さな子に絵本を読んであげたり、一緒に遊んであげたりと、面倒見の良い一面もあって、見ていて思わずほほえんでしまいます。

幼い頃にお祖父さんと過ごした影響なのか、渋い食べ物が好きだったり、落ち着いた話し方をしたりと、大人びた雰囲気が漂うのも魅力のひとつ。
ご飯づくりを手伝ったり、手のかかる同級生を気にかけたりと、高校生くらいのしっかりした子のように見える瞬間もあります。

「こんな子ども、現実にはなかなかいないよね」と思う部分も正直ありますが、子どもキャラが登場するアニメでありがちな、“大人が考えた子どもの可愛さ”が前面に出すぎてしまう寒さが、この作品にはほとんどありません。
りんちゃんがしっかり者として描かれているおかげで、過度なあざとさがなく、自然と受け入れられるキャラクターになっているんだと思います。